バスと悪霊

自分にアフリカの話を聞かせてくれたのはたいていが一年以上前にアフリカをまわった人達だった。
それによると、エチオピアでバスに乗ると毎度必ず一人は車酔いをして車内で吐いてしまう現地人がいるらしい。
その異臭に耐え切れず締め切られた窓を開けようとすると現地の乗客たちがすさまじい剣幕で窓を開けさせないように阻止してくるらしい。
窓を開けると悪霊が入ってくる、という。
だから窓も締めっきりのようで、自分も同じようにバスに乗っていて、誰も吐いてはいないもののエアコンなしで窓締め切りだとものすごく蒸し暑い。だから窓を開けてみた。
そしたら後ろの乗客が自分に向かって何か言っている。
悪霊が入ってきたのかな、と思い怒られるのかと身構えていたら、窓を開けた事によってたなびくカーテンを結び、たなびかないようにしてくれた。
礼を言うと満面の笑顔で応えてくれる。
もしかしたら、この一年ちょっとの間に悪霊はいなくなったのかもしれない。