偶然

アッバース君(17歳)とは今朝の朝食時、クレープ状の生地に、ただ甘ったるいミルクティーをかけただけのラッホという料理を食べている時に出会った。
この後、学校に行くらしく、一緒に来ないかと誘われついていくことに。
校門をくぐるとすぐ他の生徒達にドドドドドッと囲まれ、身動きがとれなくなったので早々に退散。アッバース君とも別れる。
昼飯時、何を食べようかと昼寝するヤギを眺めながら考えていたら、学校が終わり制服からサッカー日本代表のジャージ(それも数年前の物。)を着た、いかにもサッカー好きそうな気のするアッバース君とばったり再会。
何をしているのかと聞かれ、昼ごはんを食べに行くところ、と言うと彼もついてきて同じパスタを注文。スプーンもうフォークもないので素手で食べる。
食べ終えた後、値段を聞くとなぜだか二人分。
アッバース君は最初からごちそうになるつもりでついてきたようで、顔を見ると"よろしく"といった表情。
二人の間で事前にそういった話があったのならともかくとして、"自分の分しか払えませんが。"と言って残り少ない札束をアッバース君に見せると彼はたいそう驚き、お金を持って来ていないのかお店の人と口論の末、帰っていったが、たぶんお金を取りに戻ったのだと思う。

ソマリランドでは夜遅く、たとえ街灯ひとつない夜道を歩いていても強盗や暴漢に襲われる危険は感じないけれど、"I'm hungry."と訴えかけてくる人は老若男女昼夜問わずいる。なかにはサンドイッチを頬張りながらお願いしにくる子供もいる。
(というか町には街灯なんてものはなく、前もろくに見えない状態で歩いているのに、少し離れたカフェでたむろしているオッサンたちから"ジャッキーチェン"と呼びかけられるからびっくりする。)

帰っていくアッバース君のうしろ姿をよく見ると、旧日本代表のジャージは"SUZUKI"だった。